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【like an angel of the devil】(2)~鈴の場合~

『マスター。ねえ、マスター』
 マスターがカウンターの反対側から近づいてきた。
 『お替り。』直ぐに目の前に差しだされる。
 【さっきは緋色だから今度は青色だよ。】
 出されたお酒は【フローズンブルーマルガリータ。】テキーラベースのカクテル・・・
 ブルーキュラソーとライムジュースが美しい海色を、クラッシュされたアイスが夏を連想させる。
 私は思い切ってマスターに尋ねた。
 『今夜の予定は、マスター。』
 【・・・そんな先の事は判らないな。】何時ものセリフだ。
 『またぁ、もう詰らないんだから、マーロウを気取るのは止めてよ。』
 鈴は少し膨れっ面を見せる。
 【悪いな、今夜は先約が有る。】
 マスターはグラスを磨く手を止めて私を見詰める。
 【今夜は駄目だが、明日以降ならいつでも空いて居る。何か用か?】
 マスターの鈍感さにため息を付きたい。
 『そろそろ私の4年を返して欲しいの。』
 【鈴の4年】
 『そう、卒業してから今までの4年間。』
 【何のために】
 『判っているくせに・・・ずっと放っておいて。』
 【疼くのか】
 『・・・・。』
 【鈴はあまり好きじゃ無かった。と、記憶しているが。】
 マスターの声には何の感情も込められていない。
淡々と事実を言った、そんな態度。
 『・・・成熟した女が・・・少女の頃に覚え込まされた・・・教えておいて・・ずっと・・・
放って置かれて・・・。』
 鈴は途切れ途切れに、赤くなった顔を更に紅く染めて言葉を紡ぐ。
 『・・・4年。・・・4年も構って・・・4年も放って・・・。』
 【・・・それでも明日だ。明日素面の時に・・】
 マスターはそれだけ言うと私の前から去る。
 円の注文をこなし、煙草を吸いに裏口から出て行くのが見える。
 
 
 【今日は会社を休んだのか。】
 マスターは一応聞いてくる。しかし、私の答えを聞いて居るようには見えない。
 私はここに居る。だから休み。マスターの前に有る一つの事実。それだけで良いみたい。
 【浴びるか。】
 そう一言言うとマスターは、私の眼の前なのに一糸纏わぬ裸体を晒して浴室に向かう。
 レディの前なのに・・・
 相変わらずこの部屋にはマリリンしかいない。
 マスターが浴室に消えて、手持無沙汰になった私は、懐かしいこの部屋を隅々まで立ち廻る。
 『あっ。・・・・・』
 私は一つの部屋を開けて立ち竦む。
 ・・・変っていない。
 この部屋は昔のまま。・・・
 そう・・・この部屋から4年前に私は・・・逃げ出した。
 この部屋で手折られ、この部屋で飼われ、この部屋から逃げ出した。
 私の血と汗と・・・愛液に塗れた部屋。
 可憐な無垢の少女が、たおやかな身を破瓜で散らし、従順な人形となり愛欲に溺れ、そしてマスターの居ない夜に怯え慄き、耐えきれずその苦しみから逃げだした。
 逃げ出して数カ月でマスターの店に舞い戻り、今日のこの日が来た。
 『・・・あれ?』
 ベッドの脇に何かが有る。・・・・鈴の眼に違和感を伝える。
 『・・・これって。』
 マスターが浴室から戻って来た。
 『・・・円・・・。』
 悋気を含んだ硬い声で、鈴がマスターを刺す。
 【あぁ】
 だからどうした。とでも言いたげにマスターは返事をする。
 『昨夜ね。・・・円を・・』
 マスターは何も言わない。
 『円は・・・結婚・・・知っていて・・・』
 【昨夜はお祝いの酒宴じゃ無かったのかな。俺はそう記憶しているが。】
 澄まして答える。
 『何故ここに円のiイヤリングが落ちているの。』



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動機:gooで削除されたので。
一応フィクションとしてますが、ナイショ
写真は・・・・いけないんだぁ

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