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【ドルチェ・アマービレ】(33)

【綾歌君は、本気で音楽に打ち込めますか?】
 翌日、教授のレッスンを朝から受ける事になって、一通りの発声練習を済ませた後に聞かれてしまった。
 『はい、教授。私・・・今までは何所か真剣で無い所が有りました。でも、昨夜の様な寂しくて切ないのは嫌です。愛されるのに資格が必要で、それが音楽だと思ったら、浮ついた気持ちで居られません。真剣に音楽と向き合います。』
 教授はニコリともしない。
 【綾歌君、例えば日本にはプロのオーケストラが幾つ有るのか知って居ますか?】
 ええと、確か。
 『23団体です。日本オーケストラ連盟に加盟のプロオーケストラは全部で23団体あります。本拠地は札幌、仙台、山形、高崎、横浜、金沢、京都、広島、福岡にそれぞれ1つずつ、東京に8つ、名古屋に2つ、大阪に4つあり、これらのオーケストラが平均して年間約130回の演奏会を行っています』
 【では声楽家は?プロの声楽家として活動しているのは?ソプラノだけで良いです。】
 『ええと・・・・』
 【約1,400人です。どうですか、多いと思いますか少ないと思いますか?】
 教授は何が言いたいのだろう?
 今日の教授は何時もの様な優しい感じがしない、何故なのかしら?
 【現実的な話を今日は綾歌君にお話しします。日本の楽団員の生活が楽でないのは定評があり、アルバイトをしている人も多いのです。楽団のほとんどは終身雇用制だから50人、100人を抱えるとなれば人件費は馬鹿になりません。日本音楽家ユニオン2003年調査によれば、最高額はN響の年額1000万円(45.3歳)、続いて読売日響767万円(43.6歳)、都響733万円(45.5歳)と御三家がトップに並びます。低いほうは関西フィルの220万円(特別契約などを除く、40.9歳)、山形交響楽団の383万円(38.2歳)などです。400万~500万円台が一般的な所です。】
 何とも生々しい話。
 【では楽団の収入は? ほとんど演奏会収入に限られます。それも両チーム合わせて50人程度の選手で最大5万人の観客を相手にするプロ野球などと違って、オーケストラの場合、少なくても50~60人、多ければ100人を超す楽団が演奏を聴かせるのは、せいぜい1000人から2000人。桁違いに効率が悪く、定期演奏会のたびに数百万円の赤字が出るのが実情なのです。このため台所事情は火の車で、とくに近年は長引いた不況が加わって経営母体からの財政援助も細りがちです。安泰と見られた自治体支援の楽団も補助金削減が相次いでいます。札幌交響楽団は平均50万円の賞与カットに続いて本給の7%、退職金25%を削減されました。名古屋フィルも愛知県、名古屋市の双方からの助成金が削減され、神奈川フィルも一時金カット、給与の削減が続いていると聞きます。
 そして御三家の一角、東京都交響楽団では、2005年5月から終身雇用制に代わって契約楽員制度(3年間)が採用され、能力・業績評価による年俸制に移行することになったのです。契約楽員制はアンサンブル金沢が2003年に導入していますが、能力・業績評価を取り入れられたのは初めてのケースです。

 石原都知事が就任以来進めてきた財政再建策の一環で、楽団への補助金3割削減、楽団定員の90人への削減などに続く措置です。このため都響の楽団員は5月にいったん退職し、首席・副首席奏者は全員契約楽員に、他の奏者は契約楽員になるか終身雇用かを選択することになりました。年俸制の本給は終身の場合、契約より120万円~70万円低く設定されており、40歳で契約楽員なら670万円、終身では600万円になったのです。ま、これは記事の引用ですが。】
 教授の話はあまりにも現実的で、日本の現実を突き付けて居た。
 好きな音楽をするために、みんなが苦労する時代。
芸術とは人にとって何なのだろう?
 貧しい生活の中に芸術は生まれず、花も咲かないのだろうか? いいえ、そんな筈は無い。
 人の心を豊かにするのが音楽だと思う。
 【声楽の仕事も同じです。コンクールで優秀な成績を残した者などほんの一握りの者だけが思うような演奏、歌を歌えるのです。】
 『違うと思います。お言葉を返すようですが教授の言われた事、私は納得出来ません。音楽はお金でするのですか?お金が無い者は音楽をする資格がないのですか?音楽は人を愛するのでは無くて、お金を愛するのですか?・・・・・全然納得出来ません。』
 『そんな音楽なら続ける積りは有りません。』
 うわ~、言ってしまってから、自分の切った啖呵に驚いてしまう。
 教授に叱られる。思わず首を縮めた。
 【パチパチパチ!】
 教授が拍手をしている??
 【綾歌君、大変良く出来ました。花丸あげましょうね。】
 教授はクスクス笑って言う。
 【まあ、その気骨が有ればこの先に進んでも大丈夫でしょう。もし駄目だったら、その時には、私の所に永久就職すれば良いのです。】
 『え?えっ?え~~~~』


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