天使のような悪魔の声で

　『あっ、いやっ、おねがい、もうゆるして。あうう、いやぁ、おねがい、夫が・・・あなた・・・あなた・・・ううっ、ご、ごめんなさい・・・許して。』

　『あううぅ、もうしないって・・・約束したのに・・・ああぁ、うううう、イヤァあ。』　
　薫は椅子に縛り付けられ、足を拡げて固定されている。浅く座らされて、腰を突き出すようにされている。
　 　『あっ、いやっ、おねがい、もうゆるして。あうう、いやぁ、おねがい、夫が・・・あなた・・・あなた・・・ううっ、ご、ごめんなさい・・・許して。』

　『あううぅ、もうしないって・・・約束したのに・・・ああぁ、うううう、イヤァあ。』　
　薫は椅子に縛り付けられ、足を拡げて固定されている。浅く座らされて、腰を突き出すようにされている。
　薫の股間を覆っているショーツは、無残にも切り裂かれ黒々とした草叢が【あの人】の目に写っている。
　カーテンは開かれ、向かいのビルから中を覗かれているのではないか？薫は消え入りそうな恥ずかしさに全身を真っ赤に染める。
　【あの人】は乳房の上下に巻かれた縄を掴み、キリキリと絞りたてる。
　『あうう、痛い。やめてお願い。』
　痛みでジンジンする胸にそれとは違う感覚がじわじわと拡がって行く。
　（ああ、どうしてこんな事に・・・もう、もう終わった事だと思っていたのに。私は夫と一緒になって真実の愛に目覚めた筈なのに。【あの人】もそれを知って、諦めてくれたと思っていた。・・・・なのに・・・どうして、こんなこと・・）

　『ううう、何故？・・・今頃になって・・・ああぁ、くっ、ひぃい。・・・許して、お願いだから・・・しないで。・・・』
　【あの人】は細くて長い指で薫の花芯を責め立てる。陰毛を引っ張り痛みと疼きの坩堝に落とす。
　身体を扱う手管は手馴れたもので、薫は次第に追い込まれていく。
　『ああ、どうしよう・・・いやなのに・・あああっ』
　もう二度と【あの人】に啼かされまい、と決心したのに身体が心を裏切ろうとしている。
　硬くしこった乳首がその存在を主張し始める。それを察した【あの人】はほっそりとした指で乳輪を撫で回す。触るか触らないか微妙なタッチで。
　しかし、その指は頂でしこる乳首を触ってはくれない。ソフトに乳輪をなぞるだけである。
　薫はもどかしくて、上体を揺らしていることに気付かずに居た。
　【あの人】に指摘されて、火の出るように真っ赤になった。
　『うう、こんなのもういやぁ！・・・ゆるして』
　身体の疼きに心が折れそうになる、唇を噛み締め乳房から湧き上がる快感に耐えた。でも、いつまで耐え切れるか、いや、【あの人】には明白なことだ。【あの人】に散々啼かされてきた自分にも崩壊が近いことは明白だった。
　（それでも、夫を自分から裏切ることは出来ない。もう二度と夫を裏切ることは出来ない、今の自分には何よりも大切な人、そして最愛の娘・・・ああ、あなた助けて）

　【あの人】が不意に動いた、陰毛を弄っていた指をアソコに直接当ててきた。
　『はあぁ』
　つい、声が出てしまう。乳房へのもどかしい動きに対するアソコへの直接タッチは強烈過ぎた。
　（ああ、だめ。啼かされてしまう・・・これ以上は・・・）
　（あなた、ごめんなさい。こんな事になるなんて・・・ああ、何で昨日拒んでしまったのか・・・自分でもわからないの。あなたに抱かれていたら、もっと強くなれたのに・・）
　薫は自分の思考が論理的におかしいとは思わなかった。
　弱い自分を守ろうと、心が現実逃避し始めている。
　『ヒィ、許してぇ。そこはだめなのぉ、いや、イヤァ』
　クリトリスの包皮を剥かれ指の腹でグリグリされた。強すぎる刺激に気持ちよさより痛さが上回っている。
　ところが、その痛みさえも後からジーンと痺れる様な感覚に変わってくる。
　『そんな、痛いのが好きだなんて・・・・いわないで、そんな女じゃないわ。・・・ううん、あの時はどうかしてたのよ。あなたとはもう終わったことなの・・・だからしないでぇ。』
　『あううう、打たないでっ！』
　右の胸を上から叩かれる。縄で刳りだされた頂にある乳首が、プラスチック製の定規でかすめるように叩かれた。
　『イヤァああ、千切れちゃううううっ、いやぁ』
　左の乳首も叩かれた。
　【あの人】は、こんな事する人だったろうか？あの頃はもっと優しい人だった。
　あの約束を【あの人】は今でも有効だと思っているのか？
　（でも、それは夫と暮らしていく内に忘れ去った記憶。【あの人】だって、彩のこと見向きもしなかった。あんな約束しなければよかった。）