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【疑惑のテンポラリーファイル】(12)

『あれは、メールだけのお遊びなんです。・・・・あなたと離れて居て、時々しか逢えなくて寂しいから、暇つぶしでやった事なんです。あなたに黙ってした事は謝ります。でも只のメールだけです。』
 妻は悪びれた様子も見せず淡々と説明する、酷い違和感に襲われてしまいます。
 (何だ?動揺から立ち直るのが早い?)
 【じゃあ、あの派手な下着は何の為だ。昔俺が買ってやろうとしたら、変態扱いしたくせに。大人しい白かベージュかピンクの物しか持っていないはず、単身赴任前には無かったからな。】
 『あら、あなた。私が持っていたのを気付かなかっただけでしょう。あなたは夜の営みの時にも、さっさと下着を脱がせて私を抱くだけ。いいえ、下半身だけじゃないの。ショーツを脱がせて、少し弄くって、入れて出すだけ。新婚の頃のような甘い会話も無く、義務のように私を抱くだけのあなたに妻の下着がどんな物だったかなんて判るの?見もしなかったくせに。』
 妻の逆襲です。
 確かに痛い所を突かれました。時間を掛けて愛撫しセックスを楽しみ、愛を確かめ合う。子供が生まれ大きくなって来ると、それだけで夫婦の時間が少なくなります。
 その少ない時間の中で自分の欲望だけを優先していたと指摘されれば、そのとおりかもしれません。
 『あなたも良く、風俗に通っていたじゃないですか。私が知らないと思っていたのですか?お酒を飲ませるお店ならまだ許せますが、あなた、ヘルスとかソープランドのマッチが背広のポケットに残っていたのを、私が素知らぬ振りをして捨てていた事をご存じないでしょう?』
 『まったく男の人っていやらしいわ。女はそんな事はしません。』
 【昔の事じゃないか。俺は今の事を話しているんだ。この春はK子さん達との旅行だったって?。】
 『ええ、K子さんとS恵さんとね。楽しかったわよ。』
【この間K子さんに結婚式でばったり会った。K子さんは旅行に行けなかったと言っていた。みゆきと旅行したのは何処のK子さん?】
 『あ、あれ?そうだったかしら?・・・アッ痛い!頭が痛い。気持ち悪い・・』
 【いい加減にしろ! 】
  妻が仮病を使って誤魔化そうとしたので、つい呶鳴ってしまいました。
 みゆきは嘘の付けない妻だった筈なのに、明らかに調べれば直ぐに判る嘘をつく女になってしまったのでしょうか?
 【見え透いた嘘を付くなんて・・・・お前は・・・お前と言う奴は。】
 言葉が続きません。
 絶句する私に妻は重い口を徐々に開き始めます。
 『ごめんなさい。本当に事故前の事が思い出せないんです。』
 『ただ・・・・何か後ろめたいような事をしていたのかも知れないと、ふとそう思うのです。それが何なのか判らないんです。浮気・・・覚えが無いのですが、あなたが言うように間違いを犯していたのかもしれない。自分で自分を信じ切れないのです。』
 一時的な記憶喪失等は良くある話ですから、事故後暫くはその通りなのでしょうが、事故から大分経っての記憶喪失は信じられません。
 何より私の遊びの事は憶えているのに、自分の事をそう都合よく忘れたり出来る物なのでしょうか?
 主治医の先生に話をしなければ・・・考えていると、別の医師が病室に入ってきました。
 「○○さん、如何ですか?」
 頂いた名刺に、精神科と有りましたので、強い疑念を持ちました。
 【どうして先生が?】
 「事故後からPTSDが発祥する事が良く有ります。アフターケアの一環ですから、気になさらずに。大事故の後は必ず私のような精神科の医師か心療内科或いはカウンセラーがケアを行うようになっているのです。」
 どうしようか迷いました、先ほど決心した事が鈍ります。
それでも、恥を忍んで先生に相談しようと思いました。
 その先生が女性なのが躊躇の原因です。どう見ても私よりずっと若い女性に、医者とはいえ妻の浮気を相談する等、恥ずかしい限りです。
 しかしこの時は藁に縋る思いで話し掛けました。小声で。
 【先生、ちょっとご相談したい事が有るのですが、・・・妻の前では出来ない事でして。】
 何かを察してくれたらしい。妻に聞こえるように言いました。
 『ご主人、申し訳ありませんがカウンセリングを受けたという、ご家族の署名を書いて欲しいのです。形式的な事ですが、何かと厚生労働省が煩いものでお願いします。ご主人がいらっしゃるとは思わなかったものですから、書類を忘れて来ました。医局へ取りに行きますので少々お待ち頂けますか?』
 上手い言い方に私は乗りました。
 【いえ、先生。私が同行しても宜しければ、ご一緒にそこまで。みゆき、疲れたろう?今日はこれで帰るよ。】
 妻は先生の手前からか、ただ頷いたのみでした。
 私達は医局へは向かわず、先生の診察室へ行きました。この時間診察はもう終わって居ます、誰にも邪魔されず話しが出来るそうです。
 『で、ご主人。相談とは?』
 【先生のご意見を聞きたいのですが・・・・妻が事故の前の記憶・・ある特定の事だけを忘れていると言うのです。そう言う事が有るのでしょうか?】
 先生は小首を少し傾け、考えてから私に質問して来ました。
 『特定の事とは?ご主人何か言い難い事らしいですが、私達医師は、知り得た秘密を他に漏らす事は有りません、信頼して何でも仰って下さい。』
 その言葉に励まされおずおずと喋りました。
 【実は・・・お恥ずかしい話ですが・・・妻の態度がおかしいのです。私は単身赴任で家族と離れて生活して居るのですが、どうも妻が浮気を・・・】いえその事もそうですが、実は問い詰めると、事故の後遺症でその事だけ忘れたと・・・その頭が痛くなると・・・言うのです。】
 『具体的に覚えている事と忘れたと言う事をお話し下さいますか?』
 先生はカルテの様なものに何かを書きながら私に再質問をして来ました。
 病室での会話を再現し先生に話しました。
 先生の顔が憂慮に曇ります。
 『ご主人・・・一時的な健忘症・・所謂記憶喪失と言うものでは無いと思います。確実な事は検査してみなければ何とも言えませんが、健忘症の症状にしては話の繋がり、行動が唐突過ぎると思います。健忘症と言うより、パーソナリティ障害とかの精神面の異常が考えられます。』
 【パーソナリティ障害??】
 パーソナリティ障害は最近名称が変更されたもので、以前は境界性人格障害等と呼称されていたものである。
 厳密に言うと症状により、細かく分類されているらしい。
 精神病とか言うよりも柔らかく、かつ、患者本人や家族が受ける、無知な他人からの謂われなきプレッシャーも少しは軽減されるのだろうか?


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