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【明日晴れるかな?】(35)

 【以前こんな事が有った。覚えているかいユリねえ。】
**************************************
【・・・・俺・・・ユリと一緒に暮らせない。】
 ユリは衝撃を受けています。恐れていたことが現実になったのです。
 自業自得とは言え、現実になると目の前が真っ暗になってしまいます。
 激しい後悔がユリに襲い掛かってきます。
 (どうしよう、どうしよう。・・・いやだ、真ちゃんゆるして、ユリを許してください。)
 【まさか・・・と、思ったよ。初めて知った時には。】
 『違うの、違うの、真ちゃん。』
 ユリの目から涙が溢れていました。
 【目の前が真っ暗になったよ・・・・どうして?どうしてなんだ。】
 ユリの目から今では大粒の涙が零れています。
 真一の言葉一つ一つがユリの心に突き刺さります。
(あぁ・・・真ちゃん・・・あなた・・・ごめんなさい。・・・・私は・・・馬鹿な女です。あの時、あなたに全部話していれば、こんな事にはならなかった・・・・あなたに知られるのが怖くて・・・汚れたユリを愛してくれないかもしれない。そう思ってしまったの。)
 【何でだよ、俺が何をした?俺はそんなに酷い事をしたのか?】
 ユリがブンブン頭を振っています。
 (そんな事無い。全部ユリが悪いの。・・・・あなた・・・真ちゃん。あなたを苦しめてしまった。・・・どう償えば許して貰えるの。許して貰うにはどうすればいいの。)
 【チクショウ!】
**************************************

 夫の回想にユリは記憶を呼び覚ましました。
 この後、常務の精液を身体が求めたのでした。

 【・・・・その少し前・・・俺は・・・遺伝子レベルで被爆した。】

 【遺伝子が損傷して、子供を作る能力を奪われた。・・・・泣いたよ。悔やんでも悔やみきれず、恨んでもどうしようもない。俺はユリに子供を授ける力を失った。】
 ユリは言葉も無く夫の告白を聞いています。
 
 【・・・・逢いに行ったよ、常務に。・・・逢って何度も何度も殴った。暫くユリの前に現れなかった事が有るだろう。・・・・出られる状態じゃ無かったからな。】

 【殴って・・・・殴って・・・殴り疲れて・・・倒れている常務に・・お願いした。】

 【俺の代わりに2人に子を授けてくれるように・・・】
  ユリは驚愕の余り声も出ません。
 
 【欲しくても俺の子はユリにあげられない。どうすればいいのか悩んだ。悩んで悩んで・・俺は・・・頭がおかしくなった。・・・俺の妻を犯した男に俺の代わりに子を生せと頼んだ。】

 【常務に心が移ってしまうかもしれない。その恐れは何時も有った。抱かれる度に気持ちが移るだろうと、覚悟もした。】

 ユリは夫の言葉に、迷い惑乱した自分の過去を思い出し、常務に心を移しそうな自分を恥じました。
 不思議と自分を騙した夫に対する怒りは湧いて来ません。
 それより、健康だった夫が・・・と思うと涙が溢れて仕方が有りません。
 夫の事を怒る事も、憎む事も、蔑む気にもなれませんでした。
 夫は気がおかしくなった。と告白しましたが、それは嘘だと感じました。
 血の涙を流し唇が破れるほど噛んで、耐えたのでしょう。

 【・・・・黙っていて済まなかった。・・・言えなかったんだ。】
 
 【憎いだろうね。】

 『ううん。・・・・恨んでなんかいない。・・・・でも・・・・悔しい。』

 『どうして言って下さらなかったの?・・・私・・あなたの妻なのに。』
 妻と言う言葉が強く発せられました。

 『・・・どんな事でも・・・二人で乗り越えられる。・・・私が言っても嘘っぽいね。クスッ。』
苦笑交じりの言葉です。

 『あなたを・・・真ちゃんに告げられず、ズルズルと関係を続けて・・・・妊娠してしまう。・・・妻失格かなぁ。・・・真ちゃんも・・・夫・・・失格よね。』

 『真ちゃんが・・・許してくれるなら・・・失格者同士・・・3人でやり直しましょう。』

 【ユリ・・・ユリ。・・・・】
 
 『でも、真ちゃんが・・・サディストだったなんて。知らなかったわ。』
 ユリはうっとりした眼で真一を見つめます。
 
 【俺もユリがあんなに早く奴に堕ちるとは思わなかったよ。正直、焦った。】
 『そんな。だって・・・わたし』
 【いいさ、俺は自分の妻だから、ずっと遠慮が有った。君を傷つけてしまうかも知れない事を恐れた。それに・・・もしユリにその気が無かったら・・・俺は軽蔑されてしまうだろ。】

 他人が聞いたらウヤムヤの内に関係が修復してしまい、可笑しいと思うに違いありません。
 しかし二人とも判っているのです。
 お互いが相手を必要としている事に、その為には敢えて少し目を瞑り、やり直して見ようと思ったのです。
 ここで壊してしまう事は簡単です。
 いつお互いの事を赦せなくなってしまうのか、罵り合い、喧嘩をして別れてしまうのか、判らない程危ういのです。
 でも、少なくても妻を想ってした事、夫を想ってしなかった事、そのどちらの想いも理解する事が出来たのです。
 頭で考える事が出来ると言う事です。
 人間、頭で判っていても、感情で判らない事が多々あります。
 好きで一緒になった男女、婚姻届によって結びつけられた絆。
 しかしそれは、紙切れでしかないのです。
 紙切れを硬い鎖に変えるのは、相手を想う強い錬金術・・・愛情です。
 ユリと真一は今、夫婦の危機によって逆にスタートラインに立ちました。
 走り続け、転んでしまうかもしれない。疲れて立ち止まってしまうかも知れない。
 長い夫婦生活には様々な道程が幾通りにも伸びています。
 この物語のユリと真一は、この道を選びました。
 別の物語のユリと真一は別の道を辿るでしょう。
 形はどうであれ、2人が歩む道に決して間違いや正解は無いのです。
 この夫婦の物語は、ここで一旦舞台から外れます。
 またいつか、その後のユリと真一を描く事が有るかもしれません。二人の明日は晴れるでしょうか?
 真由美の事が気掛かりです。
 1人良い想いをした常務の事も気になります。更にイイ女をモノにしてしまうのでしょうか?鉄槌を下されるのでしょうか?・・・・・いつかまた・・・・・
 
                               ― Fin ―


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