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回想録 ~二人の玲子~ 30 

 痛ましいものを見るように私は杉本を見詰めた。
 既視感・・・デジャブ・・・10数年前の出来事。
 当時絵画家として、成功を収めつつあった私は、製作に夢中で家庭を余り顧みなかった。家の事は妻に任せておけば安心と、子供の養育も任せっきりだった。
 近所のお節介主婦に耳打ちされたのは、妻の行動だった。
 『・・・さん。・・・奥様幼稚園の役員ですって。お忙しいのね、昼夜幼稚園の先生と打ち合わせだって。・・・この間○×ホテルのロビーでお会いしましたの。謝恩会なのね。でも、ほかの役員の方は皆さん欠席だって・・』
 妻は娘の幼稚園の役員を年少組の頃からしていました。
 昨年はとうとう副会長になり、今年は会長だそうです。
 そのせいか、幼稚園に行く用事が増えたのです。
 「役員も良いけど、ほどほどにしなよ。美穂だってママが居ないと寂しいって言うぜ。」
 『ごめんなさい・・でも美穂の為でも有るんです。もう少しだけ・・・卒園すれば終わりですから。』
 「また、出かけるのか?」
 妻の格好はよそ行きでした。
 普段ジーパンにTシャツ姿で美穂を追い回している妻のスカート姿。
 裾から覗く膝頭・・・ストッキング越しでは有りましたが、見慣れず妙にドキドキしてしまった。
 「へ~始めてみた。・・・今度その姿描かせてくれないか?」
 『イヤだわ・・・・もう。あなたのモデル・・裸じゃない。出来る訳ないでしょう。今日もアトリエで慶ちゃんをモデルに描くのでしょう?彼女美人だしスタイル抜群だし・・ちょっと妬けちゃうわ。・・・まさか・・してないわよね。』
 「ば・・・馬鹿なことを言うな!・・・彼女はモデルだ。・・・仕事だぞ・・浮気なんかするもんか!」
 『冗談よ、あなたはそんな事が出来る人じゃないものね・・・・じゃ、遅くなるから行ってきます。』
 「ああ、行ってらっしゃい。」
 その時妻の方を振り向いていたら・・・陰のある顔を見つけたでしょう。
 (・・・あなた・・・誤解した私を赦して下さい。・・・こんな・・・ごめんなさい。)

 深夜1時帰宅した妻は、娘の部屋をそっと覗いた後、私の部屋の様子を窺いに来た。珍しく私は起きており、そんな妻の姿にふとこの間のお節介主婦との会話を思い出した。
 (・・・今何時だ?・・1時、こんなに遅くまで・・)
 私が寝ていると思った妻は、開花に下りて行った。
 数分後私はベッドから抜け出し、そっと階段を降りていった。
 浴室から物音がしている、妻が風呂に入ったらしい。
 物音がしないように脱衣所に入る。着替えの籠に妻の下着が置いてある。
 大人しいベージュのショーツにフルカップのブラ、いつもと変わらない。
 (なんだ、やっぱりあのオバサンの只の興味本位の噂話か・・・疑って悪かった。気が疲れる前に出よう。)
 一応洗濯機の中も確認してから出よう。そう思って蓋を開けた。
 中には妻の洋服がネットで保護されて入っていた。何の気なしにジッパーを空け探ってみる。
 ジットり湿った下着が手に当たった。
 (な・・・なんだ?これは)
 毒々しい紫に染まった下着、股際の角度が30℉ほどしかない細いもの、およそ女性器を覆い隠すには無理な船底の幅、尻は完全に露出するひも状のショーツと言うより、パンティと言うべき代物、その全てが普通の女性が身に付けるものではなかった。
 男に見せるための、扇情感を強調した、娼婦のもの。
 なにより船底にベットリ貼り付いている白濁した粘液がメスの匂いと栗の花のような匂いを当たりに撒き散らしている。
 一緒に隠してあったブラジャーもかろうじて乳首を隠す程度の布地しかなく乳房の殆どを露出するものだった。
 足元が崩れ、奈落に落ちていく感覚・・・絶望の底へ叩き落された。
 頭が真っ白になり身動きが取れない。
 それを掬ったのは皮肉にも妻の立てた音だった。
 あわててそれらを元に戻し、脱衣所を後にした。
 ベッドに潜り込み声を殺して泣いた。
 だが、頭の片隅でこれは何かの間違いだ。妻はそんな事をする女じゃない、と否定する自分がいた。
 (確実な証拠は無い、今妻に問い質しても、ダメだ。)




回想録 ~二人の玲子~ 29

 『杉本さん、申し訳ありませんが、主人の罪を償えません。いえ償いたくない、ただそうすると、この人を監視する人が居なくなります。多分あの家を処分しなければ慰謝料も払えないと思います。お金で済ますつもりでなくてもあの家に住み続けられるはずもありません。だから・・・先生が赦してくれるなら、家が処分できるまでここに2人を置いて頂いて、監視したいのです。勿論昼間の行動を把握するのにGPS携帯を持たせますし、定期的に行動報告をさせます。そうすれば、綾子さんと会う事を防げると思います。慰謝料が完済出来たら私達は即離婚します。こんな人からお金を貰いたくないので、明日にでも離婚届に印鑑を押させ。何時でも提出できるようにして置きます。』
 【判りました。こちらの先生はそれで宜しいのですか?】
 玲子の意図が良く判らないが、行きがけの駄賃だから、ここは玲子の思い通りにさせようと思った。
 「協議に顔を連ねた以上、何らかの支援をする積もりでした。玲子さんが何を考えているのかわかりませんが、部屋は幾つか空いてますので、少しの間なら預かります。」
 「それで杉本さんの所は・・・どうされるのですか?」
 【判りません・・・正直どうしたら良いのか・・・こいつを見ると悔しさで涙が出そうです。それから憎しみの心が起こります。・・・なぜだ?なぜなんだ?この言葉が体中を巡り苦しくなります。・・・どうしたいのか、どうすれば良いのか?・・・答えが永遠に出ないような気もしますし、綾子を赦してあげる気にもなりません。かといってこのまま離婚するだけでは、この苦しみから解放されない気もします。手元に置いておくのか、別居するのか・・・離婚するのか・・】
 杉本の正直な真情の吐露だった。
 結婚したのだから愛情があったはずで、お互いを尊重し信頼していたのに違いない、それが1度の過ちで崩れ去った。妻がどんなに許しを請っても、その気持ちが真実なのか、取り繕うための言葉なのか、まったく信用できなくなっている。
 愛しているのは自分だけと言われても、白々しく聞こえ、その言葉を吐いた口で田中のモノを銜え、睦事を発したと思うと、堪らなくなる。
 殴って済むものなら、気絶するまで殴ってやりたい。洗って落ちるものならば皮膚が皺皺になるまで風呂に浸けて洗いたい。
 だが、見えない汚液が妻の体に染み付いているのだ。自分以外受け入れた事が無かったはずの綾子の性器に、口に、顔に、乳房に、お尻に、太股に田中の精液・汗・唾液が染込んでしまった。
 もう二度と戻らない、以前の綾子・・・妻の体は汚れてしまった。
 この先、妻を赦せる日が来るのだろうか?妻を抱こうとする時、脳裏に他の男を受け入れている姿が浮かばないか?もしかしたら、自分に抱かれていても妻が思い浮かべるのは、田中のカラダか・・・心か・・・。
 苦しい・・・痛い・・・考えれば考えるほど絶望に堕ちて行きそうだ。
 涙が止め処なく頬を伝って流れていた。
 人前で泣くなど、子供の頃以来だろう。


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一応フィクションとしてますが、ナイショ
写真は・・・・いけないんだぁ

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