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【ドルチェ・アマービレ】(14)

 月の美しい夜だった。どこからか、哀切を帯びた歌が聞こえて来た。

 ♪春高楼(こうろう)の花の宴(えん) 巡る盃(さかづき)影さして♪
              ♪千代の松が枝(え)分け出(い) でし 昔の光今いづこ♪

 ♪秋陣営の霜の色 鳴きゆく雁(かり)の数見せて♪
             ♪植うる剣(つるぎ)に照り沿ひし 昔の光今いづこ♪

 ♪今荒城の夜半(よは・よわ)の月 変わらぬ光誰(た)がためぞ♪
            ♪垣に残るはただ葛(かずら) 松に歌ふ(うとう)はただ嵐♪

 ♪天上影は変はらねど 栄枯(えいこ)は移る世の姿♪
            ♪映さんとてか今も尚 ああ荒城の夜半の月♪

 『教授・・教授が歌うなんて珍しいですね。今の荒城の月ですよね。』
 【ええ、そうです。土井晩翠作詞、瀧廉太郎作曲により、明治34年・・1901年に旧制中学校の唱歌の懸賞の応募作品として作られました。原曲は無伴奏の歌曲です。
 同じ曲を1917年に山田耕作がロ短調からニ短調へ移調、ピアノ・パートを補い、旋律にも改変を加えた曲を作りました。山田版は全8小節から16小節に変更し、一番の歌詞でいえば「花の宴」の「え」の音を、原曲より半音下げています。 山田耕作のピアノ伴奏を用いながら、オリジナルの旋律を歌った例として、米良美一が録音した事が有ります。】
 『歌曲だったんですね、教授。』
 【はい、日本の音楽史に残る名作です。彼の曲はベルギーで讃美歌になったほどです。わずか23歳でこの世を去りました。・・・綾歌君は彼の曲、鳩ぽっぽを知っていますか?】
 なんだ、それなら子供の頃うたったことが有りますよ、教授。
 『ぽっぽっぽ、鳩ぽっぽ・・・・』
 【綾歌君、それは童謡の『鳩』です。間違って覚えているようですね。】
 『え?あっ・・違うんですか?あぁ、恥ずかしい。』
 綾歌は自信を持って歌った積りだったのに間違って、顔が真っ赤になった。
 【良いですか、綾歌君。これから貴女のライバルとなる世界と自分の差を良く認識するのですよ。瀧廉太郎の作曲は1901年、今でも上演される最古のオペラ、クラウディオ・モンテヴェルディ(1567-1643)作曲の『オルフェオ』が初演されたのは1607年・・300年の歴史の差、重みを越えねばなりません。】
 【来日する一流の歌手たちの演奏を耳にして何よりも圧倒させられるのは、その発声の素晴らしさです。彼らはオペラの全幕を少しの疲れも感じさせることなく歌い通し、ドラマティックなアリアにしろ、高度な技巧を要するアリアにしろ、その声をホール一杯に響き渡らせる。特にそのことを痛感させられるのは、彼らが日本人の歌い手たちと共演する場合です。
初幕においては日本の歌い手の方がよく聴こえる場合もあり、これなら外国の歌い手と互角に共演できるだろうと思う時もあるのですが、何故かその声は次第に衰え、やがてオーケストラの音に呑まれて響きが失せてしまう。ところが外国の歌手の方は、幕が進むにつれて徐々に勢いを増し、銀色に輝く美声が客席に押し寄せてきて、終幕には聴衆を完全に魅了してしまう。ソロのリサイタルの場合でも、様々なスタイルのアリアをプログラムに組み入れ、どのような曲も容易に演奏する彼らの姿には、とても信じられないものがあります。
この歴然とした違いは、言うまでなく声楽の歴史の長さから来るものであり、優れた伝統に培われた彼らの歌唱技法がもたらす結果です。】
【彼・彼女らのカラダには伝統と言う遺伝子が組み込まれているのです。それに伍して行くには並大抵の練習ではおぼつきません。綾歌君覚悟は出来ていますか?】
 教授の仰ることは、昨日までの私には理解出来なかったに違いない。しかし、今日の私は違う、あやふやな漠然としたモノから、確固とした心が出来ていた。
 それは・・・私の教授への愛・・・教授の期待に応えたいと言う動機。
 人は不純な動機と言うかも知れない。真面目な人は眉を顰めるかも知れない。
 だけど、私が初めて持った目的意識、親友たちのような夢。それを謗られる事は断固拒否する。
 『教授・・・私・・・どうすれば、彼女らに勝てるようになるの?教えて下さい。』
 【綾歌君、初めて積極的になりましたね。嬉しいですよ。これから頑張れるように、先にご褒美をあげましょう。】
 教授はいきなり私を抱き締めると、口付けしてくれた。
 『はぁぅ・・・あん・・・むふぅ・・』教授の手が私の頭に掛かり、その手を下に引き私の顔を上に向かせる。
 教授の顔が少し離れてしまう。
 『あぁ、いやぁ・・・もっと。』
 上から覆い被さる教授が微笑したように感じた。
 【綾歌君・・そのまま口を開けているんですよ。】
 私は言われたように口を開き、教授の動きを見つめる。
 教授は口を窄め、しばらくそのままにしていた。やがて教授の口が開かれた。
 一筋の流れが私の口目がけ墜ちて来る。口中に生暖かいモノが流し込まれた。
 教授の唾液、とめど無く送り込まれるそれは、甘露だった。汚いだとか、全然考えもせず、教授の唾液を嚥下する。
 『あぅん・・美味しい。美味しいです教授ぅ。もっと、もっと下さい。』
 教授のもう片方の手が、私のお尻を鷲掴みにする。その手で撫で回しまた掴む。
 頭に掛かっていた手がいつの間にか、胸をまさぐっていた。
 『あぁん・・・ふぅん・・・あぁ・・』
 教授の触り方が初めて、いやらしい手つきだった。
 乳房の周りを掌で掬い上げる。優しく揉むかと思うと強く握り潰す。周辺部から中心の乳首を目指し指がさ迷う。指先でコリコリ刺激される。乳首が痛いくらい。
 『教授ぅ・・・あぁん、イヤラシイ・・触り方ぁ・・』
 【綾歌君、こうして何度も乳房を揉んでいるからか、硬さが取れて柔らかい大人の女性らしくなってきましたよ。】
 教授が乳首を口に含み、舌で転がして遊んでいる。時々歯を当てられ甘噛みされる。噛まれると電流が走ったように、痺れる。私はせがむように胸を突き出していた。
 『ひやぁあ・・・うぅん・・ハァ。』
 お尻の割れ目に教授の指が差し込まれ、恥ずかしい所に当たる。
 『あぁいやぁ・・ソコ汚い・・触っちゃいやぁ。』
 構わずに教授の指が、触れてはいけない処、触れらるのは恥ずかしすぎる所に食い込んでくる。
 『いやぁん・・・教授ぅ・・駄目です。お尻の・・・穴は許して。』
 指の腹で、お尻の穴の皺を延ばすようにグリグリと弄られた。
 その指が頃合いを見計らって挿し入れようと、力が籠る。
 『あぁ・・ダメェ・・・おかしくなる。変な感じだよぉ・・教授・変なの変なの。』
 【綾歌君、ご褒美は終わりです。今度ご褒美をあげられるのはオーディションに受かった時でしょう。それまでに色々Lessonしますから、しっかり付いて来るのですよ。】
 あぁ、教授のLesson・・背徳的な香りがする。耐えられるかしら。
ううん、耐えるのよ綾歌。
 『はい教授。綾歌やり遂げます。だから、ご褒美一杯頂戴。』


あけまして、おめでとうございます。PageTop【ドルチェ・アマービレ】(13)

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