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回想録 ~二人の玲子~ 10

 4月20日(火)

 その部屋は特に掃除しなくて良いと指示していた。
 『低い雲が広がる 冬の夜 』
 玲子が好きな歌。カラオケで歌った最後の曲を奏でながら掃除していた。
 
 『あれ?ここはなにかしら?』
 使われていない一室は埃にまみれていたが、大事なものを隠すように白い布で覆われている。
 一番奥の隅にそれは有った。
 玲子は白い布を剥ぎ取る。
 
 『・・・・・これは・・・私?・・・いえ、似ているけど違う。』
 二様の絵・・・・裸婦像と子を抱いた裸婦・・・
 でも、異常な絵・・・・芸術的で卑猥、神聖で有りながら背徳の匂いがする。
 
 「何をしている?」
 不意に声を掛けられ玲子は、体を硬直させてしまい動けなくなった。
 「・・・観てしまったのか?」
 『済みません先生。』
 「別に隠していた訳では無いから・・・でも、他人に見せたくは無かった。」
 『どなたの絵?誰?』
 動けない身体なのに質問が飛び出してしまう。
 「知らなくていい。それより、身体のコリを解さなければ。」
 そう言うと肩から首筋、ふくろ脛から太股をマッサージしてくれた。

 漸く身体が解れ身動きが出来るようになる。
 『先生・・・』
 「わかったから、コーヒーを入れてくれ。」
 
 「あれは・・・美穂と妻の絵だ。」
 『奥様とお子さん?』
 「10年前に死別した。」
 『え?・・・・じゃ、カラオケ・・・あの時・・・』
 「思い出してね。」
 その声には万感の思いがこもっていた。

 「絵画はそれから書かなくなった。食うために仕方なく陶芸を・・・」
 ポツリポツリと語られる先生の過去。
 『ご病気か事故?で・・・』
 辛そうにそれでも答えてくれる。
「美穂は事故だ。保育園の散歩途中で事故に遭い帰らぬ人になった。5歳の誕生日前の事だ。」
 「妻は・・・・妻は・・自殺だ。」
 『うぅ、先生辛すぎる事お聞きして・・・ご免なさい、ご免なさい。』
 玲子は泣きじゃくりながら謝る。
 「誤る必要は無いよ。悪いのは私で君じゃない。」
 「でも・・・ごめん・・今日は独りにしてくれないか。」


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動機:gooで削除されたので。
一応フィクションとしてますが、ナイショ
写真は・・・・いけないんだぁ

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